前略、さようなら。

一文字一文字を記していくことですべてを過去にしていきたい。

前略、レン君。今、生きていますか?

 

 

私の自宅の近くにあってかかりつけだった病院

その病院の息子がレン君(仮名)

 

小学4年か5年ではじめて同じクラスになって

時々話すようになった

 

背が高くて、ぽっちゃり体型のレン君は

目立つのに、目立たない生徒だったようで

掃除当番が一緒でモップで二人で遊んでいたら

「さとうさんってレン君と仲いいの?」

「えー好きなのー?」

と嫌な視線と言葉が私たちに投げられた

 

 

担任の先生が、ある日突然

「レン君がお引越しで転校する事になりました」

 

その日、レン君は学校にいなくて

お別れ会の準備を急いでする必要があった

 

 

お別れ会の日

一人一人レン君にメッセージをおくるのだけれど

誰一人ココロがこもっていないようで

私は泣いてしまった

 

「やっぱりレン君のこと好きだったんだー」

「あんなののどこがいいの?」

「さとうさん変なのー」

 

そんな言葉を無視して

お別れ会が終わったあとでレン君の背中にしがみついた

掴んだお肉はぷよぷよで変な感触だった

 

「さとうさん、最後におんぶしてあげる」

レン君の背中は大きくて

背が高い私でももっと高い目線になれた

でも、泣いているので床の色の記憶しかない

 

「泣かないで」

「泣かないで」

何度もレン君は言う

 

その日のうちに引っ越してしまったレン君

 

 

でも、病院は開いていた

レン君のお父さんはずっといる

 

 

大人たちは子供から情報を得ようとするけど

そこは子供なので何もしらない

「離婚して子供を連れて出て行った」とか

「珍しい病気にかかったから大きな病院に行った」とか

好き勝手なことばかり言ってた

 

 

でも、考えてみればレン君は

言葉が少なかったし運動もしなかった

一年中肌は真っ白だった

学校にもそんなに登校していない

通院の帰りに家の外で遊んでいるレン君がいたので

近寄るとお母さんが立っていたので挨拶をした

「レン君、一緒に遊ぼう!」と近寄ると

「せっかくだけど、レンはもう遊びの時間は終わりなの」

塾にでも行くのかな?なんて呑気に思ってたけど

 

 

病気だったことは本当だったようで

時々、レン君のお母さんが自宅に帰ってきてた

私は通院の時に見かけたので

「帰ってきたんですか?」と聞くと

「レンは帰ってないのよ」と。

 

その後、何度かお医者さんのお父さん

時々帰ってきているお母さんに聞いても

「レンはいない」と言われるだけで

 

大きなトラックが家の横に止まっていたので

気になって見ていたらレン君のお母さんだった

私に気が付くと「レンと仲良くしてくれてありがとうね。じゃあね。」

と玄関前の門が閉じた

 

 

その後、しばらくしてレン君の話を聞いた

一人息子で跡取り息子のレン君

病気で亡くなったと

 

母親が付き添っていたけれど

一人息子の死によって夫婦関係が破綻し離婚

 

それって本当の話かな?

 

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ねぇ、レン君

噂なんて気にしない私だったけど

大人たちの口ぶりが怖かった

 

本当は病気なんかしてなくて

お母さんと一緒に生きてるなんて話なんじゃないかな?なんて思ったり

 

レン君は大人になっていますか?

あの優しかったレン君のままですか?

いつかまた一緒に遊べますか?

 

思い出の中のレン君は

大きな背中を私に向けています