前略、さようなら。

一文字一文字を記していくことですべてを過去にしていきたい。

さよなら大好きな人。ずっとずっと大好きな人。第五章~一度目の別れ~

 

まだまだ続きます。

こちら前回の記事です。


sugarnail.hatenablog.com

 昨日ひっそりと誕生日を迎えまして大人の階段ワンアップですわ
足が上がるまでは大人の階段登り続けます(笑)

 

 

 

私は、その後もハル兄ちゃんの実家に泊まっていた。

でも、私には触れようとはしてこなかったハル兄ちゃん。

 

「どうして?」と何度も聞いたけど

答えてはくれなかった。

 

ハル兄ちゃんのお母さんは「結婚するのか?」と聞いたそうだ。

ハル兄ちゃんは「うん、そのつもり」と答えると

「あの子は若いな」と言われたそうだ。

 

 

その話を伝え聞いた私は

ハル兄ちゃんの留守中に手土産を持参してお母さんに会いに行った。

「お母さんに会いたくて」と言った私。

お母さんは話しやすい人で、二人の子供達が度を越した不良で苦労した話や

お父さんが亡くなった話をした。

孫の面倒を見ている経緯も話してくれた。

 

 

結構長居したので孫たちが帰ってきた。

幼稚園児の二人。

すると驚く事がおきた。

「お姉ちゃん来てたのー!!」

「お姉ちゃん、遊ぼう!!」

と二人で駆け寄ってきた。

 

お母さんの顔を見ると小さく笑って頷くと

「隣の部屋で遊んできなさい」と。

 

私たちはお父さんの仏壇のある部屋でおもちゃを広げて遊んだ。

とても楽しかった。

今まで懐いてくれなかった犬まで寄ってきた。

 

 

そこにハル兄ちゃんが帰ってくると

目ん玉まんまるにして驚いてた(笑)

 

 

キャッキャッと遊び続ける私たちを見て

「いつの間に手名付けたんだ?」と笑っている。

 

 

そして、私の旅立ちの日が近づいてきて

お泊りも最終日を迎えた。

「最後の日は家族と実家で過ごしなさい」と家に帰された。

 

翌日、早朝の列車で地方都市に働きに出る私に

見送りに来てくれたのは親友とハル兄ちゃんと常連客のハル兄ちゃんの友達。

片手で抱えきれるかどうかのバラの花束を持たされた私は

「行きたくない」と言った。

 

その言葉に全員が聞こえないふりをしてた。

 

走り出した列車でハル兄ちゃんの顔を見ると

いつもの笑顔で手を振ってくれてる。

 

 

私は入社式と研修期間を終えて働きはじめるようになった頃

ハル兄ちゃんの様子がおかしい事に気が付いてしまった。

 

 

離れてすぐの頃は電話してもある程度の時間は付き合ってくれたのに

「今、忙しい」「切るぞ」と冷たくあしらわれる事が増えた。

 

その事が気になって友達に聞いてみると

「危ない女に引っかかってしまった」と。

 

 

就職した会社は老舗のホテル。

私は寮生活が本当に嫌だった。

一人部屋の寮だから良いかと選んだのに

ビジネスホテルのようにドアの下に少し隙間があるので

部屋の灯りが点いていると誰かしらがノックしてきては

「飲もう!」「話そう!」と人の出入りにうんざりだった。

 

社員食堂にも衝撃で、豪華なホテルに豪華な社内に対して

ドアを一枚開けると理解しがたい光景が広がっているんです。

ボロボロの壊れた椅子、ビールケースに板を置いただけのテーブル。ご飯はお客様の残飯。食欲が湧くわけもなく・・・。食券代が給与天引きされていくだけ。

 

仕事自体は楽しい、でもハル兄ちゃんの事も気になる。

わずか三か月で退職願を出した私はハル兄ちゃんの所へ急いだ。

 

その時はもう遅かったのかもしれないね。